ケイシー・アフレック主演、映画マンチェスター・バイ・ザ・シーを鑑賞しました。
過去に向き合うことって、果たして良いことなんでしょうかね?
壮絶な過去を背負った一人の男の物語に、過去を乗り越えることの意味を考えずにはいられなくなってしました。
また、監督はこの映画をより現実的なものに仕上げたかったそうで(公式サイトより)役者目線で物語を感じで欲しいんだそう。
監督の想い通りとてもリアルで変にドラマチックに仕立てあげていません。リーのあの姿と最後の決断。これこそ自然な姿だ、と心底思い感銘を受けたのでした。
それはネタバレ感想をしたいと思います。
マンチェスターバイザシーの概要・あらすじ
概要
監督 | ケネス・ロナーガン |
製作国 | アメリカ |
製作年 | 2016年 |
原題 | Manchester by the Sea |
上映時間 | 137分 |
ジャンル | ドラマ |
キャスト | ケイシー・アフレック(リー・チャンドラー役)/ミシェル・ウィリアムズ(ランディ役)/カイル・チャンドラー(ジョー・チャンドラー役)etc.. |
プロデューサーはなんと俳優のマット・デイモンということでもちょっと話題になりましたね。
あらすじ
心を閉ざして孤独に生きる男が、兄の死をきっかけに故郷に戻り、甥の面倒を見ながら過去の悲劇と向き合っていくドラマ。
ボストンでアパートの水道工事など便利屋として働くリー(ケイシーアフレック)はある日、兄ジョーの訃報を受けて故郷のマンチェスターに戻ります。
そこで兄の遺言でジョーの息子パトリックの後見人を任されていたことが発覚。
リーには悲劇すぎる過去の思い出が故郷にあり、苦悩と葛藤の日々を生きるリーの姿が描かれています。
※マンチェスターバイザシーはアマゾンプライムビデオで観れます(2021年6月現在)
マンチェスターバイザシーのネタバレ感想

(C)2016 K Films Manchester LLC. All Rights Reserved.
リーの闇が垣間見れる
序盤から主人公のリーの闇を抱えてそう感って半端ないですね。あの虚無感溢れる表情ケイシーアフレックうますぎる。
全てに覚めている感じでたまに情緒不安定。「彼の過去に一体なにがあったんだ」と思っちゃう様子は画面からドバドバ伝わってきます。
心や感覚にフタをしているような。
あと全然関係ないのですが、バーで女性がリーに飲み物をかけちゃったやつ。
あれ話すきっかけのためにわざとそうしたのでしょうけど、飲み物かけなきゃ話しかけられなかったのだろうか・・汗
ちょっと大胆すぎるなって思いました。それでもリーは彼女の誘いに乗らず平然。多少は感づいたでしょうけど「どうでもいい」感は出ていましたね。
ますます過去が気になっちゃった。
そして病院でのシーン、家族と病人の妻との会話。
あれ爆笑してしまったのですが(全然シリアスな場面ですが)リーの発言がシュールで。あんた一言多いし、今それ言わなくても・・って感じで的外れすぎ。
後述しますが兄の息子がパニック発作してる時にドアをブチ破ってくるシーンに関しても息子をそっとしておくという行為ができず、的外れな行動してしまって私はそのシュールさに笑ってしまいました。
心を閉ざしているが故に相手の気持ちにも寄り添えなくなったのだと解釈しています。彼は彼になりに気遣っているのでしょうけど、彼の過去を考えるとそうするのが精一杯とも思います。
だって、あの壮絶な過去があったのに、生きているだけですごいですから。
明るかった彼の壮絶な過去
中盤になりやっと彼の過去が明るみに出る。
どんな過去を背負っているんだって思ったら愛する我が子を自分の過失により火災で失うという。
こんなの想像もできないですよね。そう考えると自分の故郷は消し去りたいほど苦痛の地。兄の訃報で戻ってきたのも十分辛いし兄の息子の面倒を見るなんて”子供”ということでさらに苦痛なわけで。
兄がなぜ彼を後見人したのか….彼を変えるためなのか…。(映像からは兄めちゃくちゃ愛情深そうで良い人そうで常識人って感じしたけど)
所々画面に映る雪や冷たそうな映像が彼の心を反映しているようでした。氷のように冷えきった彼の心。
兄の息子がどうにかその心を溶かしてくれたら・・と思いながら観ていましたが。
辛い過去は、乗り越えられるものとそうでないものとがある

(C)2016 K Films Manchester LLC. All Rights Reserved.
最終的にリーが出した決断に、個人的には超共感。
辛い過去を乗り越えいまは幸せな人もいれば、当然その逆もあるわけで。
すべての人が乗り越えられるわけでもないし、乗り越えられる人が善でも悪でもない。乗り越えらえる人がすごいとか、そんなん意味がわからないし美談にすべきでもない。
第一、乗り越えるってなんだどうとも思う。乗り越えたと思っても隠しているだけだったり、感情に蓋をして忘ようとして振舞っているだけで乗り越えたと思っている人もいる。
過去を背負ったまま明るく振る舞う人だっている。基準って全く分からない正解もない。
だから、リーの姿はとても自然だと思う。
映画だからって”過去を乗り越えてハッピー”に仕立て上げていないのがすごく好感もてた。
そして観賞後、自分がなんとなくやさしい気分になっていたのはビックリでした。
マンチェスターバイザシーに使用されている音楽について
マンチェスターバイザシーの音楽もとても素敵でした。
哀愁あふれる旋律。
エンドロールに流れる楽曲は、切ないけどどことなく軽やかな雰囲気です。
Lesley Barber – Manchester by the Sea Chorale という曲です。
マンチェスター・バイ・ザ・シーの撮影場所
マサチューセッツ州・マンチェスター・バイ・ザ・シーという町が実際にありまして、地図でいうとここ↓
マサチューセッツ州・マンチェスター・バイ・ザ・シーという町美しさとわびしさを感じる場所だ。おもしろいことに、町自体は裕福なボストン人のリゾート地なのだけど、ブルーカラーの人々がボートのサービスなどで、休暇で訪れる人々をサポートしている。そして周りには労働者の多い町があり、グロスターという町は漁業に苦しんでいる。実生活と自然の美しさが混在する町だ。https://www.bitters.co.jp/manchesterbythesea/aboutthemovie.html
映像に風景が映るんですが、漁港に船が並べられていて長閑で綺麗な印象をもいました。

(C)2016 K Films Manchester LLC. All Rights Reserved.
まとめ
ひっさびさに人間ドラマらしい作品を観ました。
リアルで、ケイシーアフレックの演技も人間味がどろどろ出てて最高。
人により解釈は異なりますが、私はただただ「そうだよね、うんうん」って、観ててこちらが辛くなるような傾斜もあったけれども
最終的にはなんだか優しい気分に浸ってました。これが同情心からくるかはわかりません。
そんな作品です。