久々に画面に食いつき気味で観てしまった作品「私というパズル」
なんでかっていうと、同じ女性として冒頭30分ワンカットの出産シーンの映し方がまるでドキュメンタリーちっくで演技も素晴らしく、一緒になって「あー痛い痛い痛い」と疑似体験をしてしまったわけで・・・。
あれは圧巻ですよ。本当。
淡々と流れる映像に派手さは一切ないのですが、心にはドカンと爪痕が残る。
さらにこの作品、出産シーンがメインではなくてこれはあくまで序章。
後半は死産から立ち直るまでを描いた超ヒューマンストーリーっていうね。(冒頭でだいぶ見応えたっぷりだったけど)
出産、親との関わり方、社会との関わり方、いろんな要素が詰まっていて、これは心に響く人多そうだなーって思いました。
女性の立場から、思ったことを感じたままにお話ししますね。
※ネタバレします。
ネトフリオリジナル「私というパズル」の概要・あらすじ
概要
監督 | コーネル・ムンドルッツォ |
製作国 | カナダ・ハンガリー・アメリカ |
製作年 | 2020年 |
原題 | Pieces of a Woman |
上映時間 | 126分 |
ジャンル | ヒューマン |
キャスト | ヴァネッサ・カービー、サラ・スヌーク、シャイア・ラブーフ、エレン・バースティン、ベニー・サフディモリー・パーカー、ジミー・フェイルズ、イライザ・シュレシンガー ほか |
あらすじ
自宅出産を迎えたマーサとパートナーのショーン。
助産師イヴ立ち会いのもと、過酷な痛みを乗り越え出産。しかし、生まれたばかりの赤ん坊の様子が一変。すぐに息絶えてしまう。壮絶な苦しみと悲しみを乗り越えたように見えたマーサだが、パートナーとは溝が生じ高圧的な母との関係もうまくいかない。そして彼女は、助産師イヴとの裁判を迎えるが…。
私というパズルの感想
※ネタバレします。
冒頭30分の見応えたるや。女性の出産シーン
何といっても、この作品は冒頭の30分の出産シーンのインパクトがでかいんですよね。
ほんとに見ごたえあって、まるでドキュメンタリー映画を見ているかのような雰囲気に浸れました。
ワンカット?あれワンカット? どういった映像技術か分かりませんが、ワンカットのように見えました。
母親の陣痛の辛さは当然伝わってきますが、パートナーの「どうしたらいいのか、ただ背中をさすってあげることしかできない不甲斐なさ」感もひしひしと感じたし、助産師さんの身動かきや気遣い、そして頼もしさも伝わりました。
本当に出産って命懸けだなー・・・って思わずにはいられない映像でしたね。
痛いの次元を超えた痛さって感じ。
いや、ほんと、自分の体からもう一人の人間が出てくるってことがとんでもないことですからね。命懸けだよね・・。
そして赤ん坊が生まれるのが当然ではなく、生まれるのは奇跡って感じさえもする。
現実と向き合うことは良いことなのか
壮絶な出産、そして悲しみを経て、社会へと復帰しようとするマーサに母親からの威圧的な態度。
母ちゃんには理想がって、それを娘に当てはめたいだけだろう・・・って感じに思えた。
現実と向き合うために訴訟って・・・いやいや、現実と向き合うってそりゃ今現実で生きているんだから大事でしょうよ。乗り越えたらそら綺麗に映るだろうよ、社会に対しては。
でも大事なのは社会への建前とか見え方とかじゃなくて、あんたの娘の心だろうに。
こういう母親多いんだろうな。
いや、娘のことを思ってのことだろうけど、血は繋がっていても自分とは全く異なる人間ということを認めず、尊重せず、一時的には見放すっていう始末。
ああ・・・お母ちゃん頼むから引っ込んでいてくれって感じでした。
「あなたのことを思って」はエゴでしかない。
訴訟シーンが辛い
責任の所在を明確にするのは大事ですよ・・・
それに生まれた赤ちゃんが亡くなってしまうなんて、想像できないほど酷な悲しみですよ・・・
でも、助産師さんは出産を助け、そして元気な赤ん坊をお母さんに抱かせてあげたい一心で悪意は全くなかった。当たり前だけど。
それなのに、死産ということで最長25年刑務所?
いや、もし重大な不手際、意図的に何かしてたらそら刑務所行くべきですけど。
そんなのひどすぎるよ・・・こっちの弁護士はとことんやっつける的な物腰でしたけど、その姿勢がある意味怖かった。
それをして赤ちゃんが戻ってくるのか?大金が入ったとして傷が癒えるのか?
原因を解明するのは必要ですが、訴訟して助産を訴えるなんて・・・これは普通なの??
私がこの母親の身になれば同じことをするのだろうか?
いっぱい考えちゃいましたけど、でもやっぱり助産師さんを刑務所に送るのは嫌だ。
これは綺麗事なのかな・・。
最後は救われる
結局裁判の途中で、助産師に罪はないと発言したマーサ。
この展開に観ているこっちにとってどれほど安心したことか。
これで助産師さんを刑務所送りにしてたら胸糞映画に転じたところだった(私にとっては)。
助産師さんの人柄の良さも冒頭30分でかなり伝わったから(人柄の良さで判断したいわけじゃないけど、気持ちが助産師さんに同情という形で傾いていた)観ているこっちはすごくホっとしたんですよ。
そしてここからマーサの気持ちが前向きに。
やっと心の整理がつき始めたってことなんかな。
世の中にはこの映画のマーサみたいに立ち直れた人もいれば、立ち直れなかった人もいると思う。
私は一般的に「辛いことを塗り超えた人を称賛する風潮」には疑問を感じる派。
マンチェスターバイザシーなんてすごい心にグっと響いたもんね。
辛いことから復活って、本人も幸せに見えるし、こちらも堂々と声をかけられるしね。でも乗り越えられる事柄と乗り越えられない事柄もあるし、個人差もあるわけで。
映画としては最後、復活という形で締めくくって、綺麗な終わり方でまとまってた。
助産師さんへのセリフから、ああ・・本当に良い方向へと進んでいるんだな、無理やり乗り越えているわけじゃないんだなって思いました。
(中盤のパートナーとのぶつかり合いが相当無理やり乗り越えようとしてた心情の表れだと思ったので・・。)
という感じで、見応えある作品でした。いろんなこと考えちゃった。