今回はリップヴァンウィンクルという邦画の感想をお話しします。
実は私、ちょっと前まで邦画が嫌いでした。(邦画の良さを知らなかったからだと思います)
そんな邦画嫌いな私が映画「リップヴァンウィンクルの花嫁」(邦画)を観て「この作品良いかも」と思ったので感想をお話ししたいと思います。
リップヴァンウィンクルの花嫁のあらすじ・概要
概要
監督 | 岩井俊二 |
製作年 | 2016年 |
原作(作者) | リップヴァンウィンクルの花嫁(岩井俊二) |
上映時間 | 180分 |
ジャンル | ヒューマンドラマ |
キャスト | 黒木華、綾野剛、Cocco、原日出子、他 |
あらすじ
義母からは七海が浮気をしたのでは?と疑われ、家を追い出されるはめに。七海は安室に助けを求め、安室は奇妙なバイトを次々と紹介する。
そして豪邸での住み込みのメイドを紹介された七海は、謎めいた破天荒なメイド仲間、里中真白(Cocco)と仲良くなっていくのだが…。
監督は世界的に評価が高い岩井俊二監督。原作の作者でもあります。
“岩井俊二監督の映画は物語以上に音楽の使い方や影像の美しさがすばらしい” ということを聞いたことがあります。
ただこの映画、長いんですよw 3時間近くあるの。
キャストの主な出演作
黒木華の主な出演作
星の子(2020)、浅田家(2020)、来る(2018)、ビブリア古書堂の事件手帖(2018)、日日是好日(2018)ほか
綾野剛の主な出演作
ホムンクルス(2021)、ヤクザと家族 The Family(2021)、ピース オブ ケイク(2015)、そこのみにて光輝く(2014)ほか
Coccoの主な出演作
人魚に会える日(2016)、大丈夫であるように Cocco 終らない旅(2008年)ほか
ちなみにCoccoは本作の主題歌も担当しています。
リップヴァンウィンクルのネタバレ感想
結論としては里中真白(Cocco)のセリフがちょっと衝撃的でした。私がこの映画ちょっと良いかもっと思った要素の大半を占めているかも。
安室が裸で泣くシーンとか、何を掴んで観たらいいのかよくわからない。
よくわからないんだけど、真白のセリフが個人的には刺さったので、印象がちと変わりました。
私は映画を観てもセリフが心に残ることってあんまりないのですが、真白(Cocco)のは違いました。
「優しくされると自分が潰れてしまう」
一見「?」とも思ってしまうこのセリフ、これグサっと感じて自身と重なる人多いと思うのです。
他にも
- 「人はみんな優しいんだよ」
- 「レジのおばさんはこんな私のために商品を袋に詰めて渡してくれる。」
- 「宅配便のおじさんはわざわざ家まで荷物を届けてくれる。」
- 「この世界は幸せだらけなんだよ 」
- 「優しさに申し訳なくなって自分がつぶれてしまう」
- 「でもお金を払えば、みんなお金のために私に優しくしてくれるんだって思えるでしょ」
世界は幸せだらけと、人はみな優しいと思うことは素敵なことと思いますよ。でも私が反応したのは優しくされると自分が潰れてしまうということ。
“優しくされる自分にはその価値がある”とまでは言いませんが、その優しさを素直に受け取れない=自己肯定感の低さ。
これを私は思ってしまいました。
人から優しくされるのは、決して自分がから要求せずとも自然に普段の人間関係の中で起こることですよね。
レジも宅配も、みんなそれが仕事だからやっている。当然ですよね。そこに優しさという認識はない、業務上の1つのやりとり。お金を得るためにやっているだけです。
学校の先生だって消防士だってエステサロンの人だって”人に何かをやってあげる業務”だから人にしてあげるんです。
これってされる側はあたりまえとして受け取るもんですよね。
でもそれを優しさと受け取る人もいるのだなと。
おそらくこういう風に受け取る人は、限りなく少ないですが一定数いる、そう私は思いました。
なぜなら日本人は自己肯定感が低いから。私もそうです。
いろいろされたりすると「なんかすみません」と思うし褒められると「そんなことありません」と否定したくなる。
私は優しくされるほどの価値はないって無意識に思っちゃっている。
まわりが “当たり前でしょうよ”って思うことを当たり前としてみていないんです。
見方を変えれば幸せを感じるレベルが低いとも言えるのかもしれません。(これを私は自己肯定感の低さの一種と捉えています。)
「だってさ、この世界はさ、本当は幸せだらけなんだよ」
名言ともとれるこのセリフ。
幸せに溢れた世界に身を置く自分、心の底からそれで幸せならいいけど、彼女の声からはその奥底に闇があるよう気がしてなりませんでした。
日常でよく感じる当たり前の優しさが重圧となり、そして自分で自分を潰してしまうってのは結果的に自分を不幸に突き落とすことになり得ますよね。
映画の中では、それが嫌だからお金を払えば”これはお金の対価だ”と思えて自分で自分を潰さなくて済む、と彼女は言っていました。
それに関してはちょっと共感している自分がいました。
相手のお心遣いだと重いけど、お金の対価だとこちらが思えば自分が潰れることはない。自分を守るための手段が、お金。
自己肯定感(正直ありきたりな言葉であまり使いたくはないのですが)の低さの根は深い。この映画に共感したということは己にはまだまだそういう節があるんだろうな、と再認識してしまいました。
この映画が考えるきっかけを与えてくれた、とは思いませんが(抱えているものなので)、自己肯定感の低さが私の中で蠢いているんだと再認識できたのは悪い気はしませんでした。
などなど、なんとも考えさせられる映画ではありました。
この映画は音楽も映像もとても素敵だし、心に刺さるシーンは多々ありましたが、正直よくわからない表現、噛み砕けないシーンもありました。
ただ、私の中では自己肯定感という言葉がどうしてもちらついてしまったので、このような感想となりました。
ほぼ、里中真白(Cocco)のセリフで全て持ってかれた・・・と私の中では思っています。もちろん良い意味です。
個人的おすすめ度(評価)
★★★★★★★(6/10)
Coccoのセリフが刺さった、という要素が多めでこの点数とさせていただきました。
まとめ
なんだか後半は自己肯定感な内容になりましたが、邦画が苦手でも己の抱えている問題とリンクするセリフがあったことで、好きになってしまったっていうオチ。
伝わりにくいかもしれないですが「邦画興味ない」って人にも、リップヴァンウィンクルの花嫁なら人によってですが、おすすめできるかもしれない。日本人による、日本人に向けて刺さる映画なのでは。
心は乱れたし、再認識(再認識したからどうなんだと言われたら何も返せないけど)したし。
それと・・・・考えさせられる系の映画が好きな人にもおすすめといえますね。